講演会

【 講演会 】
13:00 ~ 15:00
39号館6階「Spring Hall」

○開会挨拶: 日本大学 理事・生産工学部長  松井 勇
○来賓挨拶: 公益財団法人千葉県産業振興センター 理事長 武田 好夫 氏

●特別講演

1「産学連携における研究機関の活用のポイント」

日本大学生産工学部研究・技術交流センター センター長 髙橋 進

製品の開発・改良において,技術の高度化,開発期間の短縮または問題解決等の方策として,大学等の研究機関の活用が考えられる。しかしながら,活用するには,一般的に敷居が高いと言われることが多いことから,研究機関の何を活用できるのかを紹介する。
   

2「モノづくり技術の開発における産学連携事例」

株式会社藤井製作所 代表取締役 藤井秀美 氏

モノづくりの技術革新において, 技術開発を効率的に行うことが必要である。そこで, 大学等と連携し,国および県の中小企業支援プログラムを活用して技術開発を行っている推進事例について紹介する。

●研究シーズ講演
1「人と環境に優しいカラー電子ペーパー」

千葉大学大学院融合科学研究科情報科学専攻 教授 北村 孝司

紙のように薄くて軽く持ち運びができ,しかも文字や画像などの情報の書換えが可能な未来の紙:カラー電子ペーパーの研究を行っています。
マイクロカプセル型電気泳動方式電子ペーパーは絶縁性液体中の帯電粒子の泳動を利用したもので,透明なマイクロカプセル内に絶縁性液体と黒色および白色微粒子を入れ,電圧を印加することにより,粒子を上下に電気泳動させて黒と白からなる画像を表示するものです。トナーディスプレイ方式電子ペーパーは正帯電性黒トナーと負帯電性白トナーを封入した2枚の透明電極付のガラス板間に電圧を印加すると,粒子が上下に移動して黒と白からなる画像を表示するものです。
特徴は高いコントラストと長時間の画像保持特性です。

 

2「炭素系材料の気相合成と応用」

千葉工業大学工学部機械サイエンス学科 教授 坂本 幸弘

ダイヤモンドやグラファイトだけでなく近年発見されたフラーレンやナノチューブといった炭素系材料は,低環境負荷材料として期待されている。特に気相合成法を用いて,非平衡材料であるダイヤモンドや自然界には存在しない窒化炭素,近年応用領域に入ってきたDLC(Diamond Like Carbon)の合成が可能である。  
当研究室で行ってきたマイクロ波プラズマCVD や熱フィラメントCVD 法を用いたダイヤモンドおよび窒化炭素の合成,プラズマCVD やスパッタリングを用いたDLC やCNx の作製,千葉県産のヨウ素を用いたヨウ素含有炭素の作製とその特性について報告する。また,これら材料の工業的応用の可能性について紹介する。

 

3「新規2層カーボンナノチューブの生成・精製と分析手法の開発」

東邦大学理学部化学科 准教授 菅井 俊樹

筒状の炭素ナノ物質,単層カーボンナノチューブ(SWNT) は有用な新規物質である。これが入れ子状態になった2層カーボンナノチューブ(DWNT) は,これまでに無い「細さ」,「耐久性」,「構造均一性」を兼ね備え,さらに有用な物質として期待されている。  
我々は高温パルスアーク放電法を開発し,このDWNT を生成・精製する手法を開発した。精製したDWNT は燃焼温度がSWNT よりも上昇し,機械的強度も高くなり,さらにトランジスターとしても活用できた。このDWNT は常にSWNT との混合物として得られ,選択的に生成することは出来ない。このために,現在新規ナノ物質構造測定法として,気相中でイオンを泳動する気相移動度測定も開発中である。

 

4「複数の二次元情報を記録する手法の動画化およびカラー化」

木更津工業高等専門学校情報工学科 講師 白木 厚司

正面から見る時と側面から見る時とで異なる情報(正面から見ると" こんにちは",側面から見ると"Hello")が得られるオブジェクトがお土産,雑貨として販売されている。しかし,この技術には記録する文字数や形に制限があり,また,三つ以上の情報を記録することは困難であった。そこで,我々は記録する画像の制限を無くし,三つ以上の情報も記録することのできる手法を提案した。  
提案手法により,複数の二次元画像を内包するボリュームディスプレイの開発に成功し,また,この技術にLED を用いて電子化することで,得られる二次元画像の動画化およびカラー化を実現した。

 

5「緊急被ばく医療における染色体分析による線量評価システム」

(独) 放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター 被ばく線量評価部 
生物線量評価室長 數藤由美子

原子力災害をはじめとする放射線被ばく事故においては,緊急医療措置のための患者の重症度に基づく振り分け(トリアージ)と治療計画の立案のために,各患者についての迅速な被ばく線量評価が求められます。個人線量計を装着していない等,物理学的線量評価が困難な場合には,患者の臨床症状や血球数だけでなく,外部被ばくにより末梢血リンパ球に生じる染色体異常の出現頻度を指標として,生物学的線量評価を行います。  
被ばく医療の中心機関として,当センターでは,特にトリアージ対応の生物学的線量評価の迅速化を目的として,染色体分析による線量評価システムを確立したので,ご紹介します。

 

6「高比強度を有する純チタン構造材料」

日本大学生産工学部機械工学科 教授 久保田正広

純チタンの強度を向上させるためには,各種金属,酸素,炭素等の元素を添加する方法が適用されている。しかし,これらの元素の濃度を上げることは現在の溶解鋳造法では困難である。また,成形時に従来からの粉末冶金法を用いると,チタンの場合には高温・長時間に保持しなければいけない事から,得られるチタンの特性が低下してしまう。  
本技術においてはチタンの粉末にステアリン酸を所定の量を添加し,メカニカルミリング処理を行った後,プラズマ焼結により比較的低温・短時間で固化成形されたチタン焼結体を作製した。この方法により得られたチタンは,ステアリン酸から供給された酸素原子より生成する酸化チタンと,空気から供給された窒素原子より生成する窒化チタンを含む。これら酸化物,窒化物が適切な量を含んだ本製法によるチタンは,純チタンと比較して高い機械強度を示す。

◇総合司会: 日本大学産官学連携知財センター

副センター長 金澤 良弘