人工湿地は、自然の浄化機能を強化した半人工的な排水処理方法である。曝気を要しないため排水処理の運転に要するエネルギーが活性汚泥法等の従来技術の20%で済むことが長所であるが、必要面積が大きいことが短所であった。本研究は、その必要面積を従来の人工湿地の25%以下にすることを可能とする技術であり、工場立地法で定められる緑地を活用した新しい高度排水処理の道を切り開く研究である。
本研究は、水質浄化用の人工湿地に必要な面積を格段に縮小することを可能にするものである。例えば、これまでの人工湿地で下水の高度処理を行うためには、ヒトひとりあたり2平方メートルの面積が必要であった。これは単位面積あたりの酸素供給フラックスが水質浄化能力の制限となるためであった。本研究技術では、大気との接触と換気を促進する空気層を人工湿地の内部に設けることにより(研究1)、この制限を打破することができる。また、空気層により人工湿地内に重層的に好気ゾーンを創出することで(研究2)、単位面積あたりの酸素供給フラックスの究極的な改善が見込める。さらに空気層の厚さや位置を調整により(研究3)、人工湿地内部の好気・嫌気ゾーンの調整も可能であり、単独の湿地で多段処理を行う道が切り開かれる。本技術は、下水以外にも、畜産排水、工場排水、農業排水等、さまざまな排水処理に適用可能である。
下水処理、畜産排水処理、工場排水処理、農業排水処理、緑化、花壇
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