敗血症、急性呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、アナフィラキシーは高頻度に見られる死亡率の高い疾病である。これらの疾患では、血管内皮細胞間の接着が障害され、血管内の水分が肺間質に漏出するため、呼吸障害をきたす。呼吸障害はこれらの疾患での直接的な死因となるが有効な治療法はない。本研究は内皮細胞間接着を強化し、血管内皮透過性の抑制することにより呼吸障害の治療をめざす。
本研究は血漿中を流れる凝固因子の1つから単離したペプチドである。当該凝固因子タンパクは本ペプチドが切除されることにより活性化されるが、切り取られた本ペプチドの機能については知られていなかった。研究者らは、本ペプチドが血管内皮の内皮構造を安定化させることを発見した。本ペプチドを培養血管内皮細胞に投与すると、細胞間の接着が強化された。培養血管内皮細胞を用いた敗血症・急性呼吸窮迫症候群モデルに本ペプチドを添加すると、細胞間接着は強化され、細胞間を通る物質の透過性は抑制された。本ペプチドは本来血中に存在し、凝固反応の過程で生じる不要な成分であり、血液凝固には影響しないと思われる。また、ヒトのアミノ酸配列を使用すれば、抗原性がないために繰り返し使用できる。これらの特徴から、本ペプチドは血管内皮の透過性亢進が原因の呼吸障害に対する有効な治療剤になると期待される。
血管内皮透過性抑制剤
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