前立腺癌における新規治療標的となりうる遺伝子の同定(11870)

技術分野
創薬
所属
医学部 医学科
氏名
髙橋 悟

目的

前立腺癌に対して有効な新たな治療法を提供すること、及び、去勢抵抗性前立腺癌の治療による効果を予測するために有用なマーカーを提供する。

技術概要

前立腺癌は欧米では最も罹患率の高い癌で、本邦においても近年の食生活の欧米化や高齢化社会の到来などにより患者数は急速な増加傾向にある。
前立腺癌はアンドロゲンにより発症・進展しており、細胞内において核内受容体であるアンドロゲン受容体(AR)が重要な役割を果たしている。そのためアンドロゲンを阻害する内分泌療法は前立腺癌に対する確立された治療法の一つであるが、しばしば治療中に癌が再燃しアンドロゲン非依存的に増殖する去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)へと進行し治療に難渋する前立腺癌患者が増加していることが臨床上の大きな課題である。
近年の研究により去勢抵抗性前立腺癌細胞内でもアンドロゲンシグナルは活性化されており、アンドロゲン応答遺伝子の発現亢進が続いていることが明らかになっている。
そこで我々はゲノムワイドにアンドロゲン応答遺伝子を検索、同定し機能解析することで前立腺癌治療の新たな治療標的の同定を目的とした。
鋭意検討を行った結果、新たなARの標的遺伝子の一つとして見出されたG3BP2遺伝子に着目するに至った。
前立腺癌の診断を目的として生検した検体にG3BP2遺伝子が高発現している場合、その後の治療経過において有意にドセタキセル治療に反応せず、前立腺癌の再燃(PSA再発)を起こすことを見出した。そこで、このG3BP2遺伝子の発現をマーカーとすることで、前立腺癌の治療による効果が事前に予測できることを見出した。
また、本発明者らは、このG3BP2遺伝子が、前立腺癌の進行を促進させ、進行性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌)の唯一の治療薬であるドセタキセルに抵抗性を持つ遺伝子である事を見出したことから、このG3BP2遺伝子の発現を抑制し得るsiRNA等の二本鎖核酸分子を作製し、これによって前立腺癌の進行が抑制できることを見出した。

用途

前立腺癌の新規治療法、去勢抵抗性前立腺癌の治療効果の予測

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