材料内に圧入するプローブ部に加熱機構を具備した摩擦攪拌接合用接合工具を開発した。
この接合工具を用いて摩擦攪拌接合することにより,加熱機構をもたない通常の摩擦攪拌接合と比較して,著しく低い回転数(例えば60 rpm)でも接合が可能となる.これにより,接合部の温度履歴を通常の摩擦攪拌接合よりも200K以上低く抑制したまま健全な継手形成が可能となり,接合部の結晶粒成長に伴う材料軟化を抑制できる。
摩擦攪拌接合は,プローブと称する突起部とショルダと称する肩部を具備する接合工具を回転させたまま被接合材接合界面に圧入し,工具との摩擦攪拌により接合界面近傍に塑性流動を生じさせ,これにより接合を阻害する表面層を破壊して,接合界面での化学結合を形成させる接合技術である。
接合を誘起するために摩擦攪拌接合では被接合材を接合工具により摩擦攪拌せねばならない。この工程では接合工具が摩擦発熱と攪拌流動の2つの役割を同時に担う。十分な攪拌流動を生じるためには材料を加熱して軟化させる必要があるが,そのために接合工具回転数を増加させて摩擦発熱量を増そうとすると,材料が接合工具の回転運動に追従できず,接合工具が空転し攪拌流動が抑制されて摩擦攪拌接合に特徴的な接合欠陥を生じることがある。
本研究では上記課題を解決すべくプローブに加熱機構を具備させた接合工具を開発した。
開発した接合工具によると、摩擦発熱と覺拌流動のうち,摩擦発熱に関する要求を補助熱源を装着することによって減じ,対象材料の攪拌流動を誘起するに適した接合工具回転数でのオペレーションを実現が可能になった。
本研究で開発したプローブに加熱機構を具備させた接合工具を用いて1050アルミニウム板の摩擦攪拌接合を実施したところ,従来報告されているパラメーター範囲よりもはるかに広いパラメーター範囲を設定可能であることがわかった。
摩擦攪拌接合およびその関連プロセスを適用して製造するあらゆる製品に対して応用可能。特にアルミニウム合金やマグネシウム合金の摩擦攪拌接合に適している。
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