アスファルト舗装廃材は、良質な骨材とアスファルトを含有した貴重な天然資源混合物といえます。近年では機械破砕によって舗装廃材を粒状化し、得られた再生骨材を再び舗装用骨材として利用していますが、再生骨材は骨材と劣化したアスファルトが混在する不均質な材料であるため、品質管理や持続的利用が難しく、用途も限定されます。
舗装廃材が含有する骨材(石、砂)とアスファルトをより有効に、かつ持続的に、さらには柔軟に利活用するためには、例えば使用後のカン、ビン、ペットボトルのように、素材ごとに分別回収し、繰り返し再資源化できるリサイクル技術の開発が不可欠です。
本研究室では水と油の性格を応用した新たな環境調和型リサイクル技術を開発しました。この技術は主に熱水中での撹拌によって舗装廃材を解砕・分級し、粗骨材(石)を再資源化する一次工程と、細骨材(砂)とアスファルトを分別、回収する二次工程からなります。
分別回収した各素材に関して品質管理試験を行った結果、特に骨材は新材と同等の品質を有することを確認しました。なお、アスファルトは分別回収時の熱水温度や撹拌速度を操作することで、性状(針入度、軟化点、伸度など)や状態(膜状、粒状、微粒子状など)を適宜制御できることが分かっています。
このほか、これまでの検討から得られた知見は以下のとおりです。
● 一次・二次工程によって舗装廃材の洗浄、解砕、分級、分別、回収、乾燥が行える。
● 分別回収した骨材およびアスファルトは新規素材と同様の管理と利用が可能である。
● 熱水の循環利用により、現行方法に比べて省エネ・省コスト化が期待できる。
● 放射性物質による汚染舗装の除染・減容化技術としての応用が期待できる。
道路舗装分野(アスファルト、アスファルト乳剤)、その他の建設・建築材料分野
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