エタノールとナイシンを用いた抗菌スプレー剤及び浸漬剤(12104)

技術分野
アグリ・バイオ / 医療・福祉
所属
生物資源科学部 食品開発学科
氏名
川井 泰

目的

ナイシンAは代表的な乳酸菌由来の抗菌ペプチドであり,乳酸球菌により生産される。また,日本を含む多くの国で食品添加物として使用されている。作用機構は細胞膜状のLiquidⅡ(細胞壁前駆体)に付着した後,細胞膜に形成された穴(膜障害性)を通じた細胞内物質の流出によるものであり,グラム陽性菌のみに効果がある。酸性領域で最大活性を示し,中~アルカリ性領域では活性減となる。当研究室では,中性pH域における効果的なナイシンの利用法として,溶媒にエタノールを使用することが有効であることを見出し,エタノールを溶媒としたナイシン溶液の性状解析と利用法の確立を試みた。

技術概要

実験1:各食肉への抗菌スプレー噴射試験
エタノール溶液及びエタノール・ナイシン溶液をそれぞれ食肉へ噴射後,肉表面上の菌数を測定し,菌数減少率を算出した。結果,エタノールの菌数減少率は最大で20%程度となった(菌数の増加例もあり)。一方,エタノール・ナイシン溶液の菌数減少率は40~80%程度となり,エタノール・ナイシン溶液の有用性が明らかとなった。
実験2:鶏ささみ肉の浸漬試験
鶏ささみ肉を60~80%エタノール溶液及び60~80%エタノール・ナイシン溶液にそれぞれ5秒,15秒,30秒浸漬語,肉表面上の菌数を測定し,菌数減少率を算出した。結果,70%エタノールの菌数減少率は15秒浸漬では100%近くだったが,30秒浸漬にて低下した。一方,エタノール・ナイシン溶液では70,80%の溶液にて浸漬30秒で減少率100%を達成し,食肉をはじめ,家庭用・医療用器具の除菌に高い利用性と有効性があることが判明した。
 ナイシンを添加したエタノール溶液は、以下の効果があった。
①スプレー噴射・浸漬による食肉表面菌の低減・殺菌に有効(エタノール単独は、全く効果なし)
②1.25 ppm(80 mL)で、鶏ささみ肉5本分の殺菌が可能 (43.2円/本↑)
③遮光、30℃下保存で、少なくとも半年以上、高い抗菌活性が持続

用途

家庭内から、食肉を含む食品製造現場、調理器具、医療器具等へ抗菌剤としての活用
・全て食品グレード
・エタノールを噴射・浸漬して問題のない商品、器具、及び環境を含む 幅広いステージで使用可能
・ナイシンは耐性菌の出現が極めて少ない膜障害性の抗菌ペプチドで、長期継続使用が可能。水分残存による微生物二次汚染も抑制可能。

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