カテコール-O-メチル転移酵素活性化物質(12184)

技術分野
創薬
所属
薬学部 薬学研究所
氏名
飯島 洋

目的

Catechol-O-methyltransferase(COMT)は、noradrenalineや2hydroxyestradiolなどのカテコール基質の水酸基をメチル化する酵素である。COMTの活性の低下が腎機能障害の進行や末期腎不全患者の心血管系死因に相関すること、COMTノックアウトマウスでは妊娠高血圧腎症や糖尿病などの症状が出ることが知られている。COMT活性をあげることがこれら疾病の治療に有用であると期待される。COMTによるメチル化反応ではS-adenosylmethionine(SAM)がメチルドナーとして働く。メチル基を失ったSAMはS-adenosylhomocystein(SAH)となるが,SAHはCOMTを強く阻害することが知られている。SAHによるCOMT阻害を解除する化合物を探索するため、内因性基質であるNEを基質とするinvitro試験管スクリーニングを実施し、当該化合物を見出した。COMTの賦活化という概念は研究者の独創によるものであり、他に報告はない。

技術概要

●当該化合物はコントロール(DMSO)と比較してSAH初期濃度が0μMのときは1.43倍、SAH初期濃度が60μMのときは1.55倍COMTを活性化した。

●SAHの濃度が高いほどCOMTは阻害され、その活性は低下するが、当該化合物はSAHの濃度が高いほど活性低下を抑制した。・当該化合物は酵素反応速度論解析、等温熱滴定、平衡透析により、COMTとSAHの見かけの親和性を低下させることにより,酵素反応速度を40-50%高めていることを証明した。・当該化合物はSAH濃度の上昇による阻害が強まるのを「動的に」緩和することが期待できる。

●当該化合物の濃度依存的にCOMT活性は上昇し、100μMで、0μMにおける活性の約1.4倍(40%賦活化)となった。・当該化合物のCOMT賦活化率は化合物の濃度に比例して認められた。

●新規のCOMT賦活化剤、及び当該COMT賦活化剤を有効成分として含む医薬組成物が提供される。本研究の実施形態に係る医薬組成物は、COMT不全に関連する疾患(例えば、循環器系疾患、生活習慣病等)の予防又は治療に適用することができ、特に、腎機能障害、心血管系障害等に好適に用いることができる。

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