近年,新型コロナウイルスや変異インフルエンザウイルスなど,種々の感染症の拡大防止のための水際対策や,がんや生活習慣病,ストレス性疾患などのモニタリングのために,簡便且つ迅速なバイオマーカー検査法の開発が望まれています。
当研究室では,最近,検査サンプルを試薬に混ぜて37℃で静置しておくだけで,標的があれば蛍光を発するというバイオマーカーの検出システムを独自に開発しました。SATIC法と名付けられた本検出システムによると,二重鎖DNA(ゲノムDNA)やmRNA(転写物),マイクロRNAやそれらの変異といった核酸標的のみならず,タンパク質や代謝物といった非核酸標的も簡便且つ特異的に検出することができます。
検査サンプル中に標的物質が存在すると,RCAと呼ばれる増幅反応の開始複合体が形成されます。一旦,開始複合体が形成されると,最終的に,多数のグアニン四重鎖を含む長いDNA鎖が生成します。この長いDNA鎖は,ThT-HEと呼ばれるチオフラビンTの誘導体によって特異的に蛍光染色されます。その結果,検出試薬を混ぜた検査サンプルの溶液は光って見えます。
標的物質が核酸分子ではない場合は,捕捉鎖とプライマー鎖の末端に,それぞれ,核酸アプタマーを用います。
SATIC法では,DNAやRNA中の1塩基の違い(点変異)を簡便に見分けることができます。野生型(WT)および変異型(MT)に対して特異的に反応する検出試薬を,それぞれ設計し用いることで,数分~十数分の間に,標的の特異的検出が可能です。
さらに,抗体と同様に,特定の標的物質に対して特異的に結合する活性をもつ核酸アプタマーの適用により,非核酸標的の特異的検出も可能です。
SATIC法に基づく簡易検査キットや検査装置等を開発し,医療,食品,環境衛生,農業など,幅広い分野での活用を目指す。
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