ヒト胎児付属物由来幹細胞の免疫制御能の差異とそのメカニズムに関する検討(研究紹介)

技術分野
アグリ・バイオ / 創薬 / 医療・福祉
所属
医学部 医学科
氏名
石毛 美夏

目的

胎盤、臍帯などの胎児付属物には間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell : MSC)が豊富に存在し、単離・培養増幅できることが報告されている。採取に侵襲的処置を要する骨髄由来MSCと比べても、胎児付属物由来幹細胞は本来破棄されるものを利用し無侵襲的に採取でき、また増殖活性が高いことから、再生・移植医療における細胞治療の有用な細胞ソースと考えられている。しかし、胎児付属物由来MSCの局在部位による形質や免疫制御能の差異についての詳細な検討は今までになされていない。  
 本検討では、胎児付属物を羊膜間質、羊膜上皮、臍帯Wharton’s Jerryに分離し、各々から得られるMSCの免疫制御能を比較することにより、細胞治療ソースとしての有効性や効率性を評価し、臨床応用をめざすことを目的とする。造血幹細胞移植は血液腫瘍疾患をはじめ、原発性免疫不全症や先天代謝異常症など様々な疾患で根治目的に施行され、効果を期待される治療法である。しかし、放射線照射や移植前の大量化学療法による治療関連毒性に加え、移植片対宿主病(Graft versus Host disease : GVHD)などの重篤な移植関連合併症があり、治療関連死のリスクが高いことが大きな問題である。移植関連合併症の予防も含めた治療戦略の一つとして、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell : MSC)をはじめとする免疫細胞治療が近年注目されている。MSCは免疫寛容能があり第三者由来でも利用可能とされ、国内外でも臨床応用が開始されているが、その多くは骨髄由来MSCが使用されている。
 胎盤、臍帯などの胎児付属物にはMSCが豊富に存在し、単離・培養増幅できることが報告されている。採取に侵襲的処置を要する骨髄由来MSCと比べても、胎児付属物由来幹細胞は本来破棄されるものを利用し無侵襲的に採取でき、また増殖活性が高いことから、再生・移植医療における細胞治療の有用な細胞ソースと考えられている。しかし、胎児付属物由来MSCの局在部位による形質や免疫制御能の差異についての詳細な検討は今までになされていない。  
 本検討では、胎児付属物を羊膜間質、羊膜上皮、臍帯Wharton’s Jerryに分離し、各々から得られるMSCの免疫制御能を比較することにより、細胞治療ソースとしての有効性や効率性を評価し、臨床応用をめざすことを目的とする。

技術概要

胎児付属物を羊膜間質、羊膜上皮、臍帯Wharton’s Jerryに分離し、各々から得られるMSCの免疫制御能を比較することにより、細胞治療ソースとしての有効性や効率性を評価した。
胎児付属物由来幹細胞の中では、WJ-MSCがもっとも免疫制御能が高く免疫原性も低い特徴を持っており、GVHD等に対する免疫細胞治療の細胞ソースとしては、臍帯が最有用と判断できた。

用途

造血幹細胞移植後の急性GVHDに対する細胞治療
難治性自己免疫疾患、炎症性疾患に対する細胞治療
臍帯保存によるMSCバンク

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