岩手県釜石市平田湾より単離されたPseudomonassp. ITH-SA-1株は、低分子リグニンの一種であるシリングアルデヒド(SYAL)を培地に添加して培養した場合、SYAL中間代謝産物の重合体と考えられる有機蛍光物質を生産することを見出した。
一般に炭化水素からなる蛍光物質には、ベンゼン環構造が含まれている場合が多いが、本蛍光物質にはベンゼン環構造は検出されなかった。また、強酸性、強アルカリ性環境下でも蛍光活性は衰えず、さらに、優れた耐熱性も有していることが確認された。
リグニンは、植物細胞壁の15~30%を占める主要な成分であり、複雑な構造を有し、未利用バイオマスの一つである。微生物機能を利用して、このようなリグニンを有用性が高い物質に変換する方法の開発は、未利用バイオマスの有効利用という観点から非常に重要である。
リグニンを高付加価値物質へ変換する微生物のスクリーニングを行い、低分子リグニンの一種であるシリングアルデヒド(Syringaldehyde;SYAL)を変換、重合し、有機緑色蛍光物質を生産する菌株シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株を岩手県釜石市平田湾の海水より単離した。本蛍光物質は、平均分子量が7.2kDaで励起波長(Ex)/蛍光波長(Em)=365/498nmの蛍光スペクトルを示す物質であり、NMR分析等からベンゼン環由来のシグナルが全く検出されないことが示唆された。
さらに、SYALの下流の代謝産物である3-O-メチルガリック酸(3-O-methylgallate;3-MGA)とトリプトンとを反応させることにより、同様の性質を有する蛍光物質が産生されることを見出した。
また、トリプトンの構成成分のうち、カゼインダイジェストが3-MGAとの反応に必要であり、さらに塩基性アミノ酸、又はアミン類も3-MGAと反応して、それぞれ異なる蛍光波長の新規の蛍光物質を製造できることを見出した。
新規蛍光素材・塗料、研究用試薬、臨床用試薬、有機EL、その他の蛍光物質の新たな用途など。
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