魚類養殖の発展に伴い,魚病被害が深刻な問題となっている。被害額は年間290億円にも達するといわれており,養殖産業の発展を阻 害する主要因の一つといわれている。一方で,近年の「安全・安心」に対する消費者の関心の高まりから,抗生物質等の治療薬剤の使用 は以前に増して制限される傾向にあり,有効性の高い新たな疾病予防対策が求められている。そこで本研究グループでは,魚類の生体防御能(自然免疫)を向上させる免疫賦活剤を利用した,“病原体が侵入しても感染しづらい”, “感染しても発病しづらい”,“発病しても死亡しづらい”魚類疾病予防手法の開発を進めている。
免疫賦活剤の超高濃度短期間投与の効能について解析を行っている。1kg餌料当り1000~5000mgの各種免疫賦活剤を加えて1~10日間給餌した後,血漿成分,組織 観察,腸内細菌叢,生体防御因子の発現・活性,白血球機能等を測定した。またストレス耐性に関する飼育実験や人為感染実験と組み合わせることにより,その効能や最適投与法について検証を進めている。
免疫賦活剤のメガドス短期間投与(7~10日間)によって,
1)魚体(成長,生理代謝)の健康状態に異常(魚毒性)は確認されなかった。
2)粘液の分泌活性,一部の生体防御因子の発現・活性,細菌の付着阻害活性の亢進が確認された。
3)ストレスに起因する生理代謝や生体防御能の変動が抑制された。
4)人為感染実験による生残性は,病原体の種類によって異なる。
水産増養殖,魚類の疾病予防
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