チョウバエは下水汚泥や不衛生な水まわりで発生する衛生害虫である。
発明者は、下水処理場で大量に発生する下水汚泥を発電の燃料源として有効利用する堆積物燃料電池リアクターの開発に取り組んできた。そして堆積物燃料電池による発電が、衛生害虫として知られるチョウバエの発生を効果的に抑制する現象を発見した。
堆積物燃料電池リアクター上部から投入した下水汚泥は、ろ材(活性炭)でろ過され、ろ材上部に汚泥が堆積して濃縮される。この堆積物に被覆される上部の活性炭層は還元状態となり、アノード(正極)として機能する。一方、下部の活性炭層は空気層と接しており、酸化状態が維持されるためカソード(負極)として機能し、電気が発生する。下水汚泥にはチョウバエの卵が含まれているが、発電を継続させた条件ではチョウバエの発生がゼロであるのに対し、発電を途中で停止した条件ではチョウバエが発生した。
発電の有無により堆積物(濃縮下水汚泥)の色は大きく異なり、発電によって鉄が酸化された状態ではチョウバエの孵化が抑制されることが示唆された。
本現象は、高電圧や薬剤に頼らずにチョウバエの発生を抑制する手法としての可能性を秘めており、水処理施設やサニタリー(水まわり)設備の衛生管理への応用が可能である。チョウバエ以外の生物への影響を防止できるロハスな手法であることが、従来の害虫抑制手法にはないアドバンテージである。
水処理施設やサニタリー(水まわり)設備の衛生管理を高電圧や薬剤に頼らずに実現可能とするシステム
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