成熟脂肪細胞を用いた新規の再生医療用ドナー細胞の開発(研究紹介)

技術分野
医療・福祉
所属
生物資源科学部 動物学科
氏名
加野 浩一郎

目的

 現在、再生医療用のドナー細胞の開発を目的として、iPS細胞や組織性幹細胞の多能性について集中的に研究が進められている。iPS細胞の樹立および維持には、遺伝子導入および種々の生理活性物質などが必須である。
また、組織性幹細胞では細胞を大量に採取するための機器および技術が必要であり、いずれも莫大な費用と手間がかかる。さらに細胞移植による治療には、多能性をもつドナー細胞を大量に準備する必要があることを考えると、簡単かつ低コストで大量供給可能な新規のドナー細胞の開発が必要である。
 我々は、皮下脂肪組織から採取した成熟脂肪細胞を自発的に脱分化させることによって、種々の細胞に分化転換する新規の再生医療用ドナー細胞 “DFAT” を開発した。

技術概要

DFATの調整方法は下記の通り。
<原理>
皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理したのち、フィルトレーションし成熟脂肪細胞からなる単一画分を採取

成熟脂肪細胞を天井培養することによって
自発的な脱分化を誘導

多能性前駆細胞(DFAT)

種々の分化誘導培地を用いて分化転換を誘導

細胞移植

脂肪組織の体積の90%以上を占める成熟脂肪細胞は浮力をもつため、セルソータなど高額の機器を用いることなく、容易に単一画分として採取が可能で、成熟脂肪細胞を自発的に脱分化させることによって多能性細胞DFATを簡便かつ低コストで作製できる。DFATは成熟脂肪細胞に由来するので、他細胞の混入のない均一な細胞群として大量に調整できる。また、DFATは、間葉系幹細胞に類似した特性をもつ。

用途

間葉系細胞に分化するだけでなく、胚葉を超えて神経系細胞や乳腺上皮細胞など外胚葉系細胞にも分化する再生医療用の多能性前駆細胞

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