数理物理学に基づいた神経突起変性の評価方法の提案(12263)

技術分野
創薬 / 医療・福祉
所属
文理学部 生命科学科
氏名
斎藤 稔

目的

神経突起の形態を定量的に表す方法を確立し,それを用いて神経突起の変性状態を解析することを目的とする。我々が提案するのは,複素解析の分野で研究されているレヴナー発展を適用することである。このような試みは,我々の試みが初めてであり,他に例を見ないものである。

技術概要

アルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症やパーキンソン病のような神経変性疾患の発症メカニズムや治療法を明らかにするには,その病態を正しく知ることが重要である。そのためには,神経突起(樹状突起や軸索)の形態を定量的に表し,その状態を客観的に評価することが必要となる。
しかしながら,これまでの評価方法は定性的なものであり,定量的な評価方法はなかった。神経突起の形態を定量的に表すことができる方法を確立することができれば,神経突起の状態を客観的に評価する重要な指標になり得る。また,このような指標を用いて神経突起の変性状態を解析することも可能となる。
神経突起の形態から数理物理学的手法を用いて得られた物理量を指標とし、簡便かつ迅速にその変性状態を評価する方法を確立した。ヒトiPS細胞(健常者由来,アルツハイマー型認知症(AD)患者由来)を培養し,神経細胞に分化させて得られた神経突起に対して試みた。その結果,AD患者由来の神経突起のスケーリング指数の方が健常者由来のものより0.5に近く,神経突起の伸長過程のランダム性が高いことが分かった。また,このような違いは,培養の初期段階(ADの原因とされるアミロイドβやタウの凝集体が発現する前)から見られた。
したがって,個々人のiPS細胞から得られた神経突起の形態をスケーリング指数によって定量化し,その変性状態を解析することにより,個々人における神経変性疾患のリスクや薬理効果を迅速に評価できる可能性がある。

用途

●神経突起の形態の客観的評価ツール
●神経変性疾患のリスク評価ツール
●神経変性疾患の治療薬の効果を評価ツール
●認知症リスク評価システム

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