機能性成分を含む新規導入作物キノアの国内での栽培と利用拡大の可能性(研究紹介)

技術分野
アグリ・バイオ
所属
生物資源科学部 アグリサイエンス学科
氏名
磯部 勝孝

目的

 2013年は国連が国際キノア年と定め、我が国でも全国各地でキノア(Chenopodium quinoa Willd.)に関するイベントが行われてきた。ただ、キノアは国内での需要量は年々増加しているが、我が国では必ずしも広く認知されたものとは言えない。現在、国内で流通しているキノアは全てが南米からの輸入品であるが、キノアの持つ機能性から我が国で栽培された国産キノアを求める声もある。生物資源科学部の作物学研究室ではキノアの生理・生態に関する研究を十数年来行ってきた結果、この作物が我が国でも栽培可能であることを明らかにした。そこで、ここではキノアの特性を紹介し、この作物の持つ可能性と今後の課題について提言する。

技術概要

 キノアは南米アンデス原産のアカザ科に属する1年生の作物である。種子に炭水化物やタンパク質などを豊富に含むため、ペルーやボリビアでは数千年前から主要な穀物として利用されていた。種子表面にサポニンを多く含む。植物の姿はアカザに極めて似ており、大きくなると高さ1mを超える。実りの時期を迎えたキノアの穂は赤や緑、黄色など様々な色やかたちをしたものがある。
 キノア栽培の中心地は原産地に近い南米のアンデス地方である。ボリビアやペルーなどの国々で世界の生産量の約90%を占めている。しかし、当研究室での研究結果、キノアが我が国でも北海道から九州まで栽培することが可能になった。
 1980年代にアメリカ航空宇宙局(NASA)は宇宙開発が盛んになる21世紀に有望な食料の一つにキノアをあげた。これをきっかけに世界的にキノアの研究が活発になった。NASAがキノアに注目したのは、優れた栄養特性である。キノアはアミノ酸のバランスがよく、現代人の食生活では不足がちな食物繊維やミネラルを豊富に含んでいる。
 キノアは子実成分の特徴から食材として利用した時、次のような効果が期待されている。
 1.骨粗しょう症防止 (ミネラル)
 2.動脈硬化、高血圧、コレステロール低下 (サポニン)
 3 .アレルギー患者の代替食 (優れたアミノ酸組成)
 4.ダイエット、便秘改善、大腸がん予防 (粗繊維)

用途

機能性食品,加工食品

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