治療用細胞としての脱分化脂肪細胞(DFAT)(研究紹介)

技術分野
創薬 / 医療・福祉
所属
医学部 医学科
氏名
松本 太郎

目的

再生医療を万人に適応できる一般的な治療にするためには,より低侵襲性に純度の高い多能性細胞を大量調製する技術が望まれる。
我々はヒトを含む様々な動物種の脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞を天井培養という方法で体外培養することにより,得られる細胞群(脱分化脂肪細胞,Dedifferentiated fat cell:DFAT)が高い増殖能と間葉系幹細胞(MSC)に類似した多分化能を獲得することを明らかにした。
※ MSCは,自家移植も他家移植にも対応可能で,がん化しにくいといった利点がある一方,ある程度侵襲性が高い操作が必要であること,得られる細胞は培養後もヘテロな細胞集団で、品質が一定しない,といった問題点がある。

技術概要

脂肪組織は非常に血管が豊富な組織であるが,コラゲナーゼ消化とフィルトレーション,低速度の遠心分離を行なうことで,成熟脂肪細胞と間質血管系分画(SVF)とに分離することが可能である。単離した成熟脂肪細胞を培養液で満たしたフラスコ内で培養すると,フラスコ天井側に付着し2-3日程で非対称性に分裂を開始する。産生された線維芽細胞様の細胞(DFAT)は,対称性に分裂を繰り返しコロニーを形成する。さらにフラスコを反転して増殖用培地で培養することにより,培養開始から約2週間ほどでコンフルエントに到達するまで増殖する。

用途

・低コストの細胞治療・再生医療
重症虚血性疾患(PAD, IHD),骨粗鬆症に伴う難治性骨折,重症熱傷に伴う創傷治癒促進など,高齢者,小児,全身状態不良の患者などに対する自家細胞治療

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