生体リズムかく乱によるメタボリックシンドローム発症メカニズム(研究紹介)

技術分野
アグリ・バイオ
所属
薬学部 薬学科
氏名
榛葉 繁紀

目的

 現代社会においてメタボリックシンドローム患者が急増した理由は多種多様であるが,興味深いことに,シフトワークもその一因であることが近年明らかにされた。シフトワークによるメタボリックシンドローム発症の理由として生体リズムのかく乱による代謝異常発症が示唆されている。
 事実,生体リズムは細胞レベルにおいてBMAL1とよばれるタンパク質により制御を受けているが,ヒトBMAL1の遺伝子多型は高血圧ならびにII型糖尿病の発症に密接に関与する。さらにメタボリックシンドローム患者の内蔵脂肪においてBMAL1の機能異常が認められている。
 そこで生体リズムのかく乱とメタボリックシンドローム発症との関係を明らかにする目的でBMAL1欠損(KO)マウスを確立し,その解析を行った。

技術概要

 マウスBMAL1遺伝子のエクソン6-8をはさむ形でloxP配列を挿入したベクターをC57BL/6マウス由来ES細胞に導入した。得られた組換えES細胞をもちいてBMAL1floxマウスを作製した。
 このマウスを全身,肝臓あるいは脂肪細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配し組織特異的にBMAL1を欠損させたマウスを作製した。
 結果,全身性BMAL1 KOマウスは,短期間(4週間)の高脂肪食負荷により,脂肪の体外への漏出,脂肪組織の肥大化抑制およびそれに伴う肝臓への脂肪酸の流入ならびに耐糖能の低下を示し,メタボリックシンドロームを発症した。
 これらの結果は,生体リズムのかく乱がメタボリックシンドローム発症のリスクファクターであることを示唆するものである。

用途

メタボリックシンドローム研究動物モデル,睡眠障害研究動物モデル

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