研究者らはこれまでに,Pseudomonassp.ITH-SA-1株は,低分子リグニンの一種であるシリングアルデヒド(SYAL)を培地に添加して培養した場合,SYAL由来と考えられる蛍光物質を生産し,かつ,本蛍光物質には,これまでに供試した限り,ベンゼン環構造が含まれていないことを明らかにし,特許出願した(特願2013-019971)。続いて,上記蛍光物質について,生産工程の簡略化に取り組み,3-O-メチルガリック酸(3MGA)とトリプトンを好気的条件下で混合することで同様の蛍光物質が生産されることを明らかにした(特願2014-167282)。さらに,塩基性アミノ酸やアミン類と3MGAを好気的に混合することにより,励起光,蛍光波長の異なる蛍光物質群が生産されることを明らかにした(特願2016-160123)。本研究は,その延長線上にあり,Pseudomonassp.ITH-B52株が,SYALを基質として,ベンゼン環を含まない有機蛍光物質を生産することを示した上で,1)同蛍光物質が固体状態でも蛍光を示すことを明らかにし,2)生成経路がSA-1株とは違うことを示唆した。
有機性発光材料は,その多彩で鮮やかな発色性,優れた加工性に加え,検出感度が高く,分子設計による機能付加が可能であることから,優れた化学素材として期待されている。その用途は,非常に幅広く,照明,有機LED,トレーサー,診断薬,試薬など多岐にわたっていることから,本蛍光物質もかなり幅広い応用が期待できる。特に,今回は固体状態でも光ることから,新たな展開が期待される。
有機蛍光材料
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