血管透過性を抑制し脳組織の傷害を改善するペプチド(11876)

技術分野
創薬
所属
医学部 医学科
氏名
日臺 智明

目的

血液凝固第9因子(F9)は他の凝固因子に切断されると活性化し、血液凝固を進めることが知られている。我々は、この切断により切り出されるペプチド(F9-AP)が様々な細胞に働きかけ、細胞を伸展させることを発見した。血管を構成する細胞の伸展は、細胞間接着を強化し、細胞遊走を抑制し、結果として血管バリア機能を強化する。

技術概要

脳の血管には、血液と神経組織との間で水や物質の交換を制御するバリア機能(血液脳関門)がある。血液脳関門は、神経機能の維持に必須の機能である。近年、中枢神経組織の傷害時に傍細胞がはたす役割が注目されている。傍細胞は外傷をうけた時に、周囲組織の傷害部へ遊走し、傷を塞ぐ肉芽組織の形成に携わる。この現象は創傷の治癒に貢献する一方、周囲組織での脳血液関門を損なう可能性がある。
 脳外傷モデルラットにF9-APを連日静脈内投与したところ、外傷後24時間後の脳浮腫が改善し、移動能力は長期にわたって有意に改善した。
また、脳梗塞モデルマウスを作成し血流遮断後にF9−APを静脈内投与したところ、血流遮断後30分でF9-APを使用した場合は、1mg/kg以上の濃度で脳梗塞縮小作用が最大になった。3mg/kgのF9−APは血流遮断から6時間後の投与でも有意に梗塞巣を縮小した。

用途

【凝固反応を伴う循環不全が関係する病態】
敗血症、播種性血管内凝固症候群、急性呼吸窮迫症候群、それらの原因である感染症、重度外傷と熱傷、急性白血病、急性膵炎、産科疾患
【局所の虚血がおこる疾患】
脳梗塞、心筋梗塞、腎梗塞、外傷や二次的に起きる浮腫、事故や疾患による低酸素脳症
【細胞膜ホスファチジルセリンの細胞外への露出抑制】
抗血小板作用、抗リン脂質抗体症候群

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