食品成分による免疫調節作用とその応用(研究紹介)

技術分野
アグリ・バイオ
所属
生物資源科学部 食品開発学科
氏名
細野 朗

目的

腸管は、生命活動にとって重要なエネルギー源として摂取した食品成分を効率的に消化・吸収する組織であると同時に、人体で最大の免疫組織でもある。腸管粘膜には生体の7~8割以上のリンパ球が存在し、そこで生体にとって有用な食品成分や腸内共生細菌、または有害な病原細菌などを識別し、感染防御やアレルギー反応の制御などの免疫応答が行われている。本研究は、この腸管免疫系に注目した食品成分の免疫調節作用を効率的に評価し、抗感染・抗アレルギー食品の開発をめざした研究展開を試みている。

技術概要

 腸管免疫系では、腸管内に免疫グロブリンA(IgA)抗体が粘膜外分泌されることによって感染防御に重要な役割を果たしている。そこで、マウスを実験モデルにプロバイオティクス菌体成分・オリゴ糖・多糖体などを一定期間経口投与し、その後、腸管関連リンパ組織のパイエル板・腸間膜リンパ節細胞を採取して免疫グロブリンA(IgA)抗体やサイトカイン産生、および腸粘膜中に分泌された総IgA抗体などへの影響を検討した。さらに、マウスを拘束ストレスに負荷させることによって宿主の免疫応答を低下させたときに腸管免疫系応答に与える影響を、被検物質をマウスに経口投与させることによってその免疫調節作用を評価した。
 結果は以下の通りとなった。
1)プロバイオティクス菌体成分(Bifidobacterium由来菌体成分、BIM)をマウスに7日間経口投与すると、腸管免疫系の誘導部位であるパイエル板細胞においてIgA産生の誘導が活性化した。
2)フラクトオリゴ糖(FOS)をマウスに4週間経口投与すると、腸内細菌叢が変化して腸粘膜中に分泌される総IgA量が亢進した。
3)拘束ストレスによって腸管免疫系の応答を低下させる実験モデルにおいて、プロバイオティクス菌体成(Bifidobacterium由来菌体成分、BIM)をマウスに経口投与すると、腸粘膜中に分泌される総IgA量の低下を抑制した。
4)摂取したプロバイオティクス・プレバイオティクスが腸管免疫系を介して宿主の免疫反応を調節し、感染症やアレルギー症状の予防へとその応用が期待される。

用途

抗感染食品,抗アレルギー食品

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