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小型マイクによる音源探査技術(12171)
従来、困難であった音源探査システムの小型化を実現する新しい音源検出手法を開発した。また、音環境の評価対象空間を撮影しているビデオカメラの映像上に、リアルタイム検出した音源位置を同時に重ね合わせ表示することで、都市および住宅の音環境をその場でリアルタイムに可視化するシステムを開発した。
これにより都市や住宅の音環境の問題箇所を容易に特定できる。
従来の音源方向検出手法は、複数の無指向性マイクを音波が通過する時間差を利用する。音の波長(周波数)に応じたマイク 間隔が必要であることから、方向検出精度が周波数に依存し、さらにマイクシステムが非常に大きくなってしまうという問題点があった。
そこで、時間差ではなく複数の単一指向性マイクの方向別感度差を利用するアルゴリズムを考案した。具体的には6本のカーディオイドマイクを3次元直交座標軸の±方向に向けて設置し、各座標軸±方向(180度反対向き)の一対のカーディオイドマイクの感度差を利用して音源方向を検出する。
本手法では複数マイクの時間差ではなく感度差を利用するため以下の特徴を有する。
1)原理上に音の波長に左右されないため、低音域から高音域まで同じ精度で方向検出できる。
2)マイク間隔が必要無いのでサイズを極めて小さく出来る。
3)複数マイクの位相特性を揃える必要がない(メンテナンスフリー)。
4)音源の種類を選ばずリアルタイムに方向検出できる。
さらに本手法の特徴を活かし、ビデオカメラと本マイクシステムを組み合わせた音環境可視化システムを開発した。
音環境診断装置,監視カメラ,無人工場の異音発見,セキュリティシステム ,ロボットへの組み込み
生体リズムかく乱によるメタボリックシンドローム発症メカニズム(研究紹介)
現代社会においてメタボリックシンドローム患者が急増した理由は多種多様であるが,興味深いことに,シフトワークもその一因であることが近年明らかにされた。シフトワークによるメタボリックシンドローム発症の理由として生体リズムのかく乱による代謝異常発症が示唆されている。
事実,生体リズムは細胞レベルにおいてBMAL1とよばれるタンパク質により制御を受けているが,ヒトBMAL1の遺伝子多型は高血圧ならびにII型糖尿病の発症に密接に関与する。さらにメタボリックシンドローム患者の内蔵脂肪においてBMAL1の機能異常が認められている。
そこで生体リズムのかく乱とメタボリックシンドローム発症との関係を明らかにする目的でBMAL1欠損(KO)マウスを確立し,その解析を行った。
マウスBMAL1遺伝子のエクソン6-8をはさむ形でloxP配列を挿入したベクターをC57BL/6マウス由来ES細胞に導入した。得られた組換えES細胞をもちいてBMAL1floxマウスを作製した。
このマウスを全身,肝臓あるいは脂肪細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配し組織特異的にBMAL1を欠損させたマウスを作製した。
結果,全身性BMAL1 KOマウスは,短期間(4週間)の高脂肪食負荷により,脂肪の体外への漏出,脂肪組織の肥大化抑制およびそれに伴う肝臓への脂肪酸の流入ならびに耐糖能の低下を示し,メタボリックシンドロームを発症した。
これらの結果は,生体リズムのかく乱がメタボリックシンドローム発症のリスクファクターであることを示唆するものである。
メタボリックシンドローム研究動物モデル,睡眠障害研究動物モデル
バイオマーカー簡便検査システム(12226)
近年,新型コロナウイルスや変異インフルエンザウイルスなど,種々の感染症の拡大防止のための水際対策や,がんや生活習慣病,ストレス性疾患などのモニタリングのために,簡便且つ迅速なバイオマーカー検査法の開発が望まれています。
当研究室では,最近,検査サンプルを試薬に混ぜて37℃で静置しておくだけで,標的があれば蛍光を発するというバイオマーカーの検出システムを独自に開発しました。SATIC法と名付けられた本検出システムによると,二重鎖DNA(ゲノムDNA)やmRNA(転写物),マイクロRNAやそれらの変異といった核酸標的のみならず,タンパク質や代謝物といった非核酸標的も簡便且つ特異的に検出することができます。
検査サンプル中に標的物質が存在すると,RCAと呼ばれる増幅反応の開始複合体が形成されます。一旦,開始複合体が形成されると,最終的に,多数のグアニン四重鎖を含む長いDNA鎖が生成します。この長いDNA鎖は,ThT-HEと呼ばれるチオフラビンTの誘導体によって特異的に蛍光染色されます。その結果,検出試薬を混ぜた検査サンプルの溶液は光って見えます。
標的物質が核酸分子ではない場合は,捕捉鎖とプライマー鎖の末端に,それぞれ,核酸アプタマーを用います。
SATIC法では,DNAやRNA中の1塩基の違い(点変異)を簡便に見分けることができます。野生型(WT)および変異型(MT)に対して特異的に反応する検出試薬を,それぞれ設計し用いることで,数分~十数分の間に,標的の特異的検出が可能です。
さらに,抗体と同様に,特定の標的物質に対して特異的に結合する活性をもつ核酸アプタマーの適用により,非核酸標的の特異的検出も可能です。
SATIC法に基づく簡易検査キットや検査装置等を開発し,医療,食品,環境衛生,農業など,幅広い分野での活用を目指す。
エタノールとナイシンを用いた抗菌スプレー剤及び浸漬剤(12104)
ナイシンAは代表的な乳酸菌由来の抗菌ペプチドであり,乳酸球菌により生産される。また,日本を含む多くの国で食品添加物として使用されている。作用機構は細胞膜状のLiquidⅡ(細胞壁前駆体)に付着した後,細胞膜に形成された穴(膜障害性)を通じた細胞内物質の流出によるものであり,グラム陽性菌のみに効果がある。酸性領域で最大活性を示し,中~アルカリ性領域では活性減となる。当研究室では,中性pH域における効果的なナイシンの利用法として,溶媒にエタノールを使用することが有効であることを見出し,エタノールを溶媒としたナイシン溶液の性状解析と利用法の確立を試みた。
実験1:各食肉への抗菌スプレー噴射試験
エタノール溶液及びエタノール・ナイシン溶液をそれぞれ食肉へ噴射後,肉表面上の菌数を測定し,菌数減少率を算出した。結果,エタノールの菌数減少率は最大で20%程度となった(菌数の増加例もあり)。一方,エタノール・ナイシン溶液の菌数減少率は40~80%程度となり,エタノール・ナイシン溶液の有用性が明らかとなった。
実験2:鶏ささみ肉の浸漬試験
鶏ささみ肉を60~80%エタノール溶液及び60~80%エタノール・ナイシン溶液にそれぞれ5秒,15秒,30秒浸漬語,肉表面上の菌数を測定し,菌数減少率を算出した。結果,70%エタノールの菌数減少率は15秒浸漬では100%近くだったが,30秒浸漬にて低下した。一方,エタノール・ナイシン溶液では70,80%の溶液にて浸漬30秒で減少率100%を達成し,食肉をはじめ,家庭用・医療用器具の除菌に高い利用性と有効性があることが判明した。
ナイシンを添加したエタノール溶液は、以下の効果があった。
①スプレー噴射・浸漬による食肉表面菌の低減・殺菌に有効(エタノール単独は、全く効果なし)
②1.25 ppm(80 mL)で、鶏ささみ肉5本分の殺菌が可能 (43.2円/本↑)
③遮光、30℃下保存で、少なくとも半年以上、高い抗菌活性が持続
家庭内から、食肉を含む食品製造現場、調理器具、医療器具等へ抗菌剤としての活用
・全て食品グレード
・エタノールを噴射・浸漬して問題のない商品、器具、及び環境を含む幅広いステージで使用可能
・ナイシンは耐性菌の出現が極めて少ない膜障害性の抗菌ペプチドで、長期継続使用が可能。水分残存による微生物二次汚染も抑制可能。
HDGP法を応用した簡易的遺伝子診断法(11777)
統一した手法で全ての病原微生物を検出できる診断手法(HDGP法)を提供する。
これまで病原微生物の検出・同定は、診断対象となる生物が、どのような病原微生物に感染しているのかを推定し、検出する手法で行われてきた。そのため最初の予想を誤れば、実際に感染している病原微生物を特定できず、診断を繰り返す必要があった。
提案するHDGP(Hyper detection of infectious disease based on Genome Profiling)はランダムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)とTGGE(温度勾配ゲル電気泳動)の二つの技術により構成されている。 ランダムPCRはゲノム構成に従って増幅される断片が変わるため、健全な生物と羅病した生物とでは異なる増幅産物を形成する。この差異はTGGEによって、より鮮明に認識することが可能である。HDGP法により病原体の種類によってパターンが異なり、どのような病原であっても問題なく検出可能となる。また、遺伝情報不明のサンプルであっても解析可能であるため、未知病原や外来種であっても問題なく検出できる。
●感染症診断●微生物利用生産物の品質管理
●動植物の品種管理
●違法交配種の追跡調査●外来生物・交雑種の同定
日本と世界の伝統食品に見る抗酸化性・機能性成分(研究紹介)
食品に含まれる種々の成分の機能性、健康増進効果は、近年の西欧型食習慣の世界的広がりと生活習慣病の増加に伴い重視されている。我々は各地の伝統食品に含まれる機能性因子の探索と機能性評価を行っている。我々の研究室では、世界有数の長寿地域である沖縄の食、肉・乳製品が主食のモンゴル遊牧民、インド医学で利用されてきた有用植物などについて研究している。特に食品成分の抗酸化性や化学療法の標的酵素に対する阻害効果の評価を中心として、食品による健康増進、生活習慣病の予防を目指す。
食品や薬用植物の成分を抽出し、機器分析に供すると同時に、酵素法、培養動物細胞系などにおいて種々の機能性評価を行う。また、微生物的手法により機能性成分の特性改変を試みる。さらに、未利用資源の有効利用を目指し、新規機能性食品素材の創出を目指す。
種々の食品の機能性や特性を評価し、抗酸化性・嗜好性・水溶性・色調などの改変を試み、また新規生理活性を見いだした。さらに未利用部分の活用などを通じて食品応用への可能性を示した。こうした取り組みは、伝統的食品成分の有効性の解明や、新規食品素材の創出、既存食品素材の改良・有効利用などにつながると考える。
当研究室では、上記に示した以外に、大豆イソフラボン水酸化物およびその酵素変換化合物、未発酵カカオ豆抽出物のポリフェノール成分、カカオハスク(カカオ豆の殻)、カカオの代用品として用いられるキャロブ(イナゴ豆)の抗酸化性と加熱特性、高知県大豊町特産の微生物発酵茶「碁石茶」などについて研究を進めている。
カエルをモデルとした捕食者適応による表現型の可塑性に関する研究(研究紹介)
エゾサンショウオの捕食圧に対して膨満型に誘導されたオタマジャクシ個体と,捕食圧にさらされていない基本型の個体での顕著な形態的な差を示す体表で,遺伝子群の発現・抑制を見出すことにより,オタマジャクシが受ける被捕食ストレスによる表現型の可塑性を支配している遺伝子のスクリーニングを行う。
充分に膨満化させたオタマジャクシの実験群及びコントロール群の表皮より,RNAを抽出した。このRNAを用いてサブトラクションを行い,この遺伝子を用いてマイクロアレーを作成した。このマイクロアレーを用いて充分膨満化したオタマジャクシ頭皮における遺伝子発現を調べた。
次に,このアレーを用いて,膨満化に従って発現してくる遺伝子と膨満化に従って抑制される遺伝子(膨満化の鍵遺伝子)のスクリーニングを行った。コントロール,エゾサンショウウオ幼生を添加して飼育した群,サンショウウオと飼育後,サンショウウオを抜いて飼育した群を作成した。それぞれの群よりRNAを抽出し,マイクロアレー解析,クラスター解析,in situハイブリダイゼーションを行った。結果,
1)人間の病気とも関連する遺伝子(水泡性類天疱瘡抗原遺伝子)がオタマジャクシ表現型の可塑性にも関与することが判った。またサンショウウオ除去によってオタマジャクシの形態も元に戻り,この遺伝子の発現が低下したことが治療のヒントになる可能性がある。
2)表現型の可塑性を支配している鍵遺伝子の1つとして,哺乳類にも存在するuromodulin-like gene (Tamm-Horsfall protein)がオタマジャクシの表皮を包むように発現していることが判った。このことにより,この遺伝子の機能の一つである水を通さないことがオタマジャクシの膨満化に関与していることが判った。
調水機能膜としての新素材など,水泡性類天疱瘡の治療への応用
共培養で微生物力アップ!(研究紹介)
微生物の様々な能力は,それらが多様な環境に適応するために備わっている。そうした環境要因の一つに他の生物との相互作用があるが,通常実施される純粋培養ではそうした要因は反映されない。つまり他の生物との相互作用があって初めて発揮される能力は従来の培養法では見逃されている可能性がある。本研究では,特に微生物どうしの相互作用に基づいて発揮される能力を見いだし,それを技術開発へと橋渡しすることを目指している。
異なる微生物と共培養することによって,単独の培養では起こらないような増殖や発揮されない機能(たとえば抗生物質の 生産や酵素の生産)が誘発される現象を探索した。次に,その誘発の要因となっている化学因子を生化学的手法によって同定した。さらに,それらの化学因子に応答を示す微生物を改めて自然界に広く探索してその系統と機能を評価し,該当する共培養に もとづく誘発現象の普遍性と多様性を検証した。
・医薬や酵素などの有用生理活性物質探索に対する潜在的シーズの発掘
・微生物複合系によって進行するバイオマス分解や難分解性物質の分解除去等の効率化
・共生・感染に依存する微生物病害の発症メカニズムの解明と防除法の確立