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食品栄養科学による抗動脈硬化作用の探索(研究紹介)

目的

 日本人の4人に1人は心疾患や脳血管疾患といった動脈硬化を基盤とする疾患で亡くなっています。現在、その予防にはコレステロール合成阻害薬が最も多く使用されていますが、その効果は3割にとどまります。したがって、残り7割のリスクを軽減する物質を見つけることは重要課題であり、その一つとして高比重リポタンパク質(HDL)が注目を集めています。

技術概要

 HDLは、動脈硬化巣中の余剰なコレステロールを回収し、肝臓へと戻して糞便中へと排出する抗動脈硬化機能を担っています。現在、HDLの回収力を増強させる物質を様々な食品成分を用いて探索しています。これまで発見した代表的な食品成分として、コーヒーポリフェノール、アスタキサンチン、シトルリン及びビタミンEなどがあります。

糖尿病関連腎臓病の早期治療介入のためのバイオマーカーの開発(研究紹介)

目的

 現在、日本の人工透析医療費は年間総額1.5兆円を超えており、その原疾患として糖尿病関連腎臓病が40% 以上を占めるため、病態解明や治療法の開発が喫緊の課題となっています。糖尿病関連腎臓病の腎機能低下の速度は個々の患者さんで異なりますが、これまで末期腎不全(ESKD)の高リスク群を早期に発見するためのバイオマーカーは確立していませんでした。

技術概要

 そこで我々は糖尿病の患者さんを対象にESKD未発症の段階での血中蛋白を網羅的に測定し、血液採取時点から10年間の患者さんのESKDの発症率との関係を解析しました。その結果、10年以内にESKDを発症した患者さんで、発症しなかった患者さんと比較して、血液中で高値であった蛋白群を同定しました。

人工知能による心臓画像診断の自動診断支援システム開発(12437)

目的

 負荷心筋シンチグラフィーは冠動脈疾患を標的とした検査法の一つで、リスク層別化や予後予測に有用性が認められています。検査の概要と典型的な狭心症の画像を図1に示します。負荷心筋シンチグラフィーの読影には熟練を要し、診断精度の向上及び再現性が課題です。本研究は人工知能によって上記の課題を解決することを目標に開始されました。研究代表者は人工知能を用いた負荷心筋シンチグラフィーの自動診断支援システムを開発し特許出願を行いました。

技術概要

 本研究で開発された人工知能モデルは、従来の人間の専門医が読影に使用する画像データ、心機能データ、症状や既往歴を含む臨床データを使用して診断を行います。本研究では、既に自施設のデー
タを用いて開発された人工知能モデルに多施設のデータを追加することによって、汎用性及び診断精度の向上を図り性能を検証します。

コーヒーに入れる砂糖の驚くべき効果-今までの砂糖の常識をくつがえす新感覚の糖質、パラチノースのさまざまな健康効果-(研究紹介)

技術概要

 ひと息つきたい時に飲むコーヒーに砂糖を入れる方は多いかと思います。従来、砂糖の摂り過ぎは、身体に良くないというイメージがありますが、実のところさまざまな健康効果が報告されている砂糖と同じ仲間がいます。それは長年、私が取り組んでいるパラチノースです。パラチノースはハチミツに微量に含まれている天然の糖質で、小腸内でゆっくりと吸収されるため、血糖値の急激な上昇を抑え、インスリンを節約することができるのです。また、日常使用している砂糖(スクロース)に比べ内臓脂肪が蓄積しづらく、肥満を改善する利点があるとも言われています。しかし、どうしてそのような現象が起こるのか解明されていませんでした。そこで、われわれは肥満ラットにパラチノース及びスクロースの溶液を経口投与し、エネルギー代謝の動きを観察しました。その結果、パラチノース投与後にエネルギー代謝の高値が持続することをつかみました。また、このパラチノースの代謝促進作用が肥満の改善につながることも明らかにしました。今後は、これらの知見を基に、肥満の方を対象にした臨床研究を実施していきたいと考えます。

イチゴフレーバーの改革-香りを操り、新たなイチゴ品種を育成-(研究紹介)

技術概要

 イチゴは甘酸っぱさだけでなく、華やかで心地よい香りを持つ果実です。香りを嗅ぐだけで、私たちはその甘さを連想します。イチゴの食味は甘味で評価されることが多いですが、近年は香りの重要性が認識されてきており、香りに特徴がある品種も登場しています。
 日本のイチゴは世界的にも評価が高く、また品種ごとに食味の特徴もあります。私はその多様性を生み出しているのが香りではないかと考え、さまざまなイチゴ品種の香りを分析しました。その結果、揮発性が高い約90種類の香気成分が同定され、一部のエステル類(フルーツ香)やフラノン類(キャラメル香)など、各品種のフレーバーを特徴づける成分が少しずつ分かってきました。
 こうしたデータを活用し、同学部の水野真二准教授と共に、香りに優れたイチゴ品種の開発に着手しています。香りを構成する成分の種類が多く、またイチゴは遺伝様式の複雑な8倍体植物であるため、狙い通りの香りの改良に当たって高い障壁となります。
 私たちは、香りに優れた個体を効率的に選抜するDNAマーカーを開発するために、重要成分の合成に関わる遺伝子の機能解析を進めています。将来的には、香りの遺伝様式モデルを構築し、日大発のイチゴ品種の開発、さらには他のフルーツの品種開発につなげたいと考えています。

卵子が元気になる培養環境-卵管の動的環境を模倣する新しい培養デバイスは、胚の発育を促進させる可能性がある-(研究紹介)

技術概要

 ヒト生殖補助医療において体外受精・顕微授精が選択された場合、卵子は受精から胚に至るまでの5日間程度を体外の人工的環境で静かに過ごした後に、再び母親の胎内に移植されます。
 このとき、体外で発育した胚は、卵管内の自然な環境で発育した胚に比べて品質が低下すると考えられています。
 胚品質を低下させない体外培養法の開発が期待される中、私は胚発育にとって本来あるべき環境(卵管内)に着目し、自然現象の中に最適解を求め医療へ応用させる生体医工学的見地に立った独創的な発想で研究を展開しています。
 培養器とは異なり、卵管内の自然な環境は動的であり、胚にさまざまな刺激を与えています。これまでに胚に音響振動を与えたり、培養温度に概日リズムを加えることで胚品質が向上することが分かってきました。
 今後は、卵管環境を模倣するマイクロ流体チップ搭載型の電子回路デバイスの開発など、国際的な共同研究にも力を入れながら、一人でも多くの妊娠を望む夫婦にとって一助となるように医工連携研究を推進していきたいと考えています。

脱分化脂肪(DFAT)細胞の自家培養表皮生着促進効果(11877)

目的

広範囲深達性熱傷症例に対してヒト自家培養表皮が保険適応となり人工真皮と自家培養表皮移植による皮膚再建法の確立が望まれている。しかし、現状では再建真皮上に移植された自家培養表皮の長期生着が安定せず、機械的刺激に対して脆弱であり脱落し易いなどの問題点が残されている。

技術概要

本研究は、全層皮膚欠損創への自家培養表皮移植に際して、移植床への脱分化脂肪(DFAT)細胞投与が培養表皮生着に対しておよぼす効果をブタを用いた動物実験モデルで検討した。
培養表皮は移植床との間に基底膜が再構築されて生着するが、その主要成分はcollagen IVとlaminin とされる。真皮再建に際してDFATにより治療を行った群では、培養表皮移植後の表皮真皮接着層にlamininの発現促進が見られ、基底膜の構築とanchoring fibrilの形成促進が認められた。
本研究結果よりDFATが培養表皮生着促進に有用であることが示唆された。

用途

・熱傷治療における培養表皮生着率の向上
・再生医療製品(培養表皮)

がんの鑑別診断のための分子検査業務支援アプリケーション(12154)

目的

検査項目の選択作業の手間を軽減することができる分子検査支援装置及びプログラムを提供する。

技術概要

現在、医療機関における診療科は、消化器外科や呼吸器内科など、主に対応する臓器に応じて設置されている。一方で、病理診断科は臓器毎に分かれておらず、個々の病理医は全診療科と全臓器に対応するために、臓器や標的分子横断的に俯瞰する立場にある。しかし、鑑別診断のためのマーカーや分子検査情報は診療科別や臓器別に多数存在し、研究の進展に伴って増加し続けている。
さらに、これらの診断や検査に関わる情報は、診療科や臓器別に整備されているため、非常に分散した状態となっており、病理医は個人の努力でそれぞれの情報にアクセスし、自身の情報を更新していかなければならず、医師に情報格差をもたらしていると考えられる。
医師の情報格差は、適切な病理診断の精度に影響を与え、適切な治療法選択の機会を失ってしまう患者の医療格差が生じる一因となる。
これらの課題解決を目指し、分散するエビデンス情報を一元化して簡便に提示するアプリケーション(アプリ)の開発を試みた。
本アプリは人体の複数の臓器名リストから診断対象の検査標本の臓器名を選択肢することにより、
免疫組織化学染色による診断又は遺伝子解析による診断を含む分子検査の検査項目から診断対象の検査標本に対して実施が推奨される推奨検査項目を提示するものである。
病理診断業務に沿って構築した本アプリは、診断分野で初めてのエビデンスに基づく情報の一元化システムであり、導入による業務効率や知識の向上は、医師の情報格差の解消への有用性が期待される。

用途

病理診断補助システム